今ジーコを否定してはいけない

監督としてのジーコを感情的に全否定してはいけないと思う。まあ、采配についてはいいものもあったし悪いものもあったと思う。それは監督の評価の一つのものさしではあるけど。
8年前のフランスワールドカップ予選の時と比較して今回の予選では、日本代表に名を連ねるメンバー個々の実力は確実に上がっていた。ジーコは選手の自主性に任せても予選を勝ち抜く力はあるだろうと判断したのだろう。そして実際にそうなった。8年前は予選期間中の監督の更迭という荒療治を経て最後の最後でやっとワールドカップ出場権を手にしたのだから、そこから比べれば、選手の自主性を重んじてきっちり予選を突破したのは上々の結果だ。この点が全く評価されていないように感じるのだけど、その理由は、多分、誰が監督をやっても予選突破できたように思えるからだろうな。
今大会において、確かに、今の日本代表なら本大会1次リーグを2位で突破する可能性はあったと思う。でもそれは「確実」とはいえなかったし、確実でないものを実現するだけの身体面、精神面での充実が足りなかったということだ*1。それを思い知ったということでは、この惨敗は未来への糧にできるものだと思う。運良く中途半端に16強とかに入るよりも良かったんではないかな。ワールドカップで勝ち抜けるだけの力を養い、真の強豪と呼ばれるには、まだ数々の大会の経験が必要だと思う。今の日本はただの新興国に過ぎない。
フランス大会では、予選をぎりぎりで勝ち抜いた。本大会では勝てなかったけど、まあまあ善戦はしたのではないか。日韓大会では、世界の強豪と勝負して、自分達もやればできそうだということを感じたのではないか。ドイツ大会では自分達に決定的に足りないものを感じた。ここまではなかなか順調に来てるんじゃない?ここから先が本番で、それはきっとマラソンのように果てしなく感じるものだと思う。きっと本当の歓喜はその先にあるんだと、そう信じている。気持ちはそうだけど、まあ、冷静になって考えれば、まあ、どうなるかはわからんよなあ。未来に確実なものはないのはどんな世界でも一緒。茨の道だね。でもそれは夢ではなく現実だ。
指導者としてのジーコはとても優れていると思う。真の指導とは、自分の力で考え正しい道を選ぶことができるように導くことであって、決して短期的な結果を与えるものではない、ということをジーコはよくわかっていると、私は思うからだ。だからこそジーコはある程度世界での経験を積んだ選手が中心のこのチームで自主性を重んじたのではないかな。あるいはちょっと時期尚早だったのかな。
いいように解釈しすぎかな?とも思う。でも、全否定はリセットだ。埋もれてしまっているいいものもすべて無かったことになってしまう。ジーコはこれで日本代表の監督は辞めるみたいだけど、これからもなんらかの形で日本のサッカーに関わり続けて欲しいと切に願う。

*1:オーストラリアはそれを持っていた。監督だけでなく選手個々が。