王の手は癒しの手

アラゴルンがアセラスの葉を使って、傷ついて死地をさ迷うゴンドール大将ファラミアを救うシーンはなかなかの名場面です。
目を覚ましたファラミアのセリフ……王は何をご下命でしょう?は、北方王家とゴンドールの執政*1との間の長期に渡る目には見えない確執を、解決させたのでした。
ところで、アラゴルンのこの癒しの力は、どこから来るものなのでしょう。
指輪物語本文中で癒しの力を発揮するのは、アラゴルン旅の仲間/闇夜の短剣、ロスロリアン王の帰還/療病院)、エルロンド旅の仲間/数々の出会い)、エルラダン、エルロヒア(王の帰還/療病院)の4人(だと思う)。
エルフの殿グロールフィデルフロドの傷を診はしたけど、癒してはいない(旅の仲間/浅瀬への逃走)。このときのグロールフィデルの言葉この刃による傷を癒すのは、私の腕では及ばぬ。意味することが、エルフには癒しの力(体を蝕む暗黒の影を取り払う力)がない(若しくはほとんどない)という意味(グロールフィデルエルフの中でも力のあるエルフ)なのか、癒しの力はあるけど、傷が深くて力が及ばないという意味なのかよくわからない。
まあ、黒の乗り手に追われている一刻の猶予もない状況で、不確かな治療を試みるよりは、さっさと裂け谷に向かって身の安全を図る方が賢明であろう。
また、ガラドリエルも治療を施していない。ロスロリエンに随分長く滞在したにも関わらず。フロドが傷を負っていることはガラドリエルは知っているはず(裂け谷から連絡がいっているはず)で、ガラドリエル癒しの力があるならば、フロドの傷の状態を診ると思うのだが、どうだろうか。
エルロンドとその息子たち、エルロンドの遠縁にあたるアラゴルンとその一族は、エルフの血をひいているけど、それが癒しの力の源とはどうも考えにくい。これでもかとエルフが登場するシルマリルの物語でも、エルフ癒し不思議な力を発揮するシーンはない(と思う)。
で、エルロンド一派の先祖を見てみると、マイア*2のメリアンがいるじゃないですか。メリアンは、ヴァラクエンタによると、ローリエンに住み、ヴァーナとエステ(傷と疲れの癒し手)に仕えたとあるので、癒しの力を持っていたのだろう。アラゴルンは、メリアンの血をひいているから癒しの力があるのだろう。

*1:詳しくは書きませんが、過去に北方王家アラゴルンの先祖)がゴンドールの王位を要求し、ゴンドールの執政が拒否したという経緯がある。

*2:神に仕える精霊